ナマオの四足研究所

~日本四足競技連盟代表のブログ~

四足タイムトライアル2019前夜

 

いよいよ明日の15時から、四足タイムトライアル2019が開催となります。

 

主催者としても気軽にできるようにと、大会ではなく計測イベントという形で企画させていただきましたが、いざやろうとなるとものすごいプレッシャーです。

 

私も計測に参加するので、今日は陸上競技場を使って最終調整する予定でしたが、出発直前になって疲労やらプレッシャーやらが一気にこみ上げてきて、しばらく寝込んでしまいました。

 

昔から、人前に立つのは大の苦手でした。それが今回は、自分で企画したイベントで、主催者として、集まった参加者たちの前に立つのです。

こんな自分で、よくここまでできたなと思います。

 

明日は2014年の世界大会以来、5年ぶりに四足走行の実力者が集まります。

最高のイベントにするため、あともう一日頑張ります!

 

至高の四足用具を探せ!手袋編1

 

早めに始めようと思いつつも始められなかったシリーズ第一弾です。

四足競技をしていれば誰もが気になるであろう手袋、シューズ、その他便利グッズの情報をこのシリーズで紹介していきたいと思います。

 

本日は手袋についてです。

 

四足走行の経験者が使う手袋は、だいたい粒付き軍手かゴム手袋です。

世界記録保持者の“いとうけんいち”さんなんかは軍手を使っているのですが、私の場合は手が痛くなるので、ゴム手袋+内手袋(粒無し軍手やサイクリンググローブ)を組み合わせています。

 

選ぶ際に見ているのは、

【実用面】フィット感、グリップ力、反発力

【経済面】強度、値段

【安全面】クッション性、通気性

です(こだわり過ぎでしょうか笑)。

 

二枚重ねなので、外手袋と内手袋で求めているものは違います。

実用面と強度はすべて外手袋任せ(内手袋もズレない程度のグリップ力は必要ですが)。クッション性は内手袋任せ。通気性は両方に求めています。湿気は水ぶくれと雑菌の原因になりますから。

 

そして最近購入したのがこちら!

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アトム 快適ラバース

見た目からして使えそうじゃないですか!

一回だけタータンで使ってみたのですが、しっかり地面を掴んでいる感じがあり、反発力も十分です。それに加え、「手の平からも快適通気」の謳い文句!笑

もう少し使い込んでみたら、【実用面】【経済面】【安全面】の項目で点数付けてみようかと思います。

でも多分、27日の四足タイムトライアルは前の手袋で挑戦します。使い慣れているということで。

 

ゴム手袋を画像検索で調べまくったことがあったのですが、「アトム」というメーカーが、なかなかいい四足向け手袋を揃えています。

ホームセンターで売っている場合が多いので、気になった方は探してみてください。

 

おまけ↓

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四足タイムトライアルで使う四足用三脚(足3本しかありませんね……)

 

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【動画】パタスモンキーのギャロップ走行

 

以前、四足動物のギャロップ走行には二つの型があるとお話ししました。

チーターや犬などが使う回転襲歩。馬や猿が使う交叉襲歩

この二つは四つの肢が着く順番で分けられています。

 

↓ まだ読んでいない方はこちらへ

quadrupedal-namao.hatenablog.jp

 

ところが、この二つの型に当てはまらないギャロップ走行をする動物が世の中には存在します。

それは世界最速の猿――パタスモンキーです。

パタスモンキーというと、四足走行ギネス世界記録保持者のいとうけんいち選手が手本にしているとよく言っていますが、彼は交叉襲歩なので実は全然違います。

 

こちらがパタスモンキーの動画。1分40秒~に注目です。


Segera Retreat - rare Patas Monkeys

 

スローで見てみると、パタスモンキーは交叉襲歩と回転襲歩を組み合わせているのが分かるかと思います。

後ろ足からの着順で言うと回転襲歩なのですが、前足からの着順は交叉襲歩です。

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LF=左前肢,RF=右前肢,LH=左後肢,RH=右後肢

図にするとこうなります。

本来、ギャロップ走行というのは左右非対称の走り方なのですが、パタスモンキーのは二つの型を交互に組み合わせることで左右対称となっています。

 

四足走行をしていて左右のバランスが気になる方は、この走り方を試してみるのも面白いと思います。

かなり習得難度の高い走法ですが、私の場合はスキップで左右の足を入れ替えるイメージを掴みながら練習したら、うまくいきました。 

 

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【動画】四足初心者指導~いぬぷろさん~

 

先日、Youtuberの“いぬぷろ”さんに四足の指導をさせていただく機会がありました。

その時の動画が完成したということで、紹介させていただきます。↓


【疑獣忍法】四足走行にチャレンジしてみた

 

四足を指導するのは初めてでしたが、まずは基本の歩行から入りました。

走るのと歩くのは一見関係なさそうですが(実際体の使い方が異なりますし)、「しっかり手で地面を押す感覚」「足が窮屈にならないための前傾姿勢」を身につけるのに役立つと考えました。

四足歩行には霊長類特有の「前方交叉型」と一般四足動物の「後方交叉型」があることは、過去の記事でお話ししましたね。いぬぷろさんの場合は後方交叉型でした。

人間は霊長類なのに、実は後方交叉型が多かったりします。後方交叉型で歩く動物は前足に重心が寄る傾向にあるので、おそらく人間は極端な前傾姿勢で重心が前に寄って、この歩き方になるのではと思います。

ということは、後方交叉型になる人は、ちゃんと手で地面を押せているということになります。

窮屈に感じる方は階段の上りで四足歩行してみるといいでしょう。

人間は足が長すぎるので、前傾姿勢が取れないと足を前に運ぶスペースがなくなってしまいます。そこで、段差を利用して手足の長さの差を軽減し、楽な姿勢を見つけようというわけです。

実際に私は子供の時に階段を四足で上っていました。

特に練習せずともスムーズな四足歩行ができたのは、このためだと思っています。

 

さて、歩行の練習法を教えたところで、メインの走行です。

四足動物が全力で走る時はギャロップという走り方をしますが、手足の着く順番でチータータイプ(回転襲歩)と馬のタイプ(交叉襲歩)に分けることができます。

人間の場合は馬と同じタイプで、いぬぷろさんもそうでした。

足の動きは人間特有で、二足走行に近かったです。まあ、最初から四足走行が得意だった人はだいたいそうです。

これもこれで速いのですが、この走り方では歩幅の伸び代がほぼゼロなので、回転数に頼らざるを得ません。それだと記録を伸ばすのもスタミナ的にも厳しいので、今回は動物と同じギャロップを練習してみました。

こちらの動画ではカットされていますが、カエル跳びで練習しました。

全身のバネを使う感覚を磨くためです。二足型だと足で掻き込むだけなので、なかなか身につかない感覚だと思います。

ギャロップというのは簡単に言うと、カエル跳びで左右の手足の着地をずらしたものです。これで速く進もうとすれば、自然と手足の着地がずれていくはずです。初心者だとどうなるんでしょうね。とりあえずはいぬぷろさんの練習成果を待ちましょう。

 

いぬぷろさんは今月27日の記録会にも参加する予定です。

当日はどんなタイムが出るのでしょうか。楽しみです!

 

↓ こちらが記録会の要項となります。一般参加も受け付けているのでぜひ!

quadrupedal-namao.hatenablog.jp

 

四足イベント計測ルール

計測イベント「四足タイムトライアル2019」の参加締切があと一週間ほどとなりました。 

quadrupedal-namao.hatenablog.jp

 

一般参加の方にはすでにお知らせしましたが、ブログでも改めて計測ルールを紹介します。

 

①一人あたり2レーンを使用し、2レーン間の白線を跨いで進むこと。
  例:第一走者は1~2レーン、第二走者は3~4レーンの間の白線に沿って進む。
②“左右の手→左右の足”の順で着地すること。歩行(手足交互)でも可。
  OK例:右足→左足→右手→左手……、この逆も可
  NG例:右足→左足→右足…、この逆も不可
  ※ただし、スタート時の一歩目、二歩目は足でも良い。
③スタートの合図より先にスタートした場合はフライングとする。
④上記ルールに反した場合、当該記録は無効となる。
⑤希望者はスターティングブロックを使用できる。
⑥手袋(軍手、グローブ等)を装着すること。靴は運動靴、又は陸上用スパイク。
⑦頭(胸だと分かり辛いため)が50mのラインを越えた時点でゴールとする。

 

一時期禁止されていた二足型(ヒト型)走法については、今回はOKということにします。今のギネス世界記録は二足型で記録したものなので、同じ条件で行きたいと思います。

 

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【動画】イヌの四足歩行~ギャロップ

 

また更新が滞ってしまいましたね(汗

現在、就活に卒業研究、四足イベントの企画と小説の執筆活動と、「四足の草鞋状態」ですので、なかなか手がつけられない状態です。

quadrupedal-namao.hatenablog.jp

 

これからは多少短くてもいいので、ちょっとした発見や日記でも記事にしていきたいと思います。

 

さて、今日はこれまで書いてきた記事の内容をまとめたような動画を発見したので、紹介させていただきます。

 

イヌの様々な四足歩行をスローで撮ったものです。


Canine Gaits : walk , amble , pace , trot , flying trot , canter , gallop

 

walk,amble……歩行に分類できます。イヌなので四肢の着順は後方交叉型です。

pace……ペースが上がった時に見られる歩行。これはまだあまり話していませんでしたね。右前肢と右後肢、左前肢と左後肢。同じ側の肢がほぼ同時に接地します。

trot,flying trot……ペースと同様ですが、こちらは反対側の肢がペアになって同時に接地します。人間の二足歩行に似ていますね。さらにペースが上がると、左右の肢が接地する間に浮遊する瞬間が出てきて、二足走行に近付きます。

canter……これはあまり聞いたことがありませんが、低速のギャロップと言えばいいのでしょうか。肢の着順的には、安定性に優れた交叉襲歩(transeverse gallop)です。

gallop……これがトップスピードの時の走り方です。イヌの場合は直進性に優れた回転襲歩(rotatory gallop)となっております。

 

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現在最速の四足走法を解説

 

予告通り、今日は現在最速の四足走法を解説します。

基本的なことはいちいち解説しないので、分からないことが出てきたら「研究」カテゴリから過去の記事を探ってみてください。

 

はじめに~どんな走法が存在するのか

過去二回の大会の出場者を観察すると、以下のような走法が確認できます。

①指先を地面に付けるだけの二足走行

……速く走りたい初心者にありがちな走法です。手で体重をほとんど支えないので、その分、腰に大きな負荷が掛かります。腰痛に繋がる恐れがあるので絶対にやめましょう。まず、これを四足歩行とは呼びたくないです。

②四足歩行

……歩行なのでスピードは出ませんが、スタミナは節約できます。とりあえず完走したい方向け。しかし人によってはこれでもかなりキツイらしいです。

③カエル跳び(バウンディング)

……両手両足をそろえてジャンプする走法。これも初心者の走法ですが、コツをつかめばかなり速く走れます。また、四足走行の基本となるギャロップの習得に繋がるため、経験者でもこれで練習することがあります。

ギャロップ襲歩

……四足哺乳類と同様の走法。これがスムーズにできたら初心者卒業です。カエル跳びで左右手足の着順をずらすとこれになります。自然界には交叉襲歩と回転襲歩が存在しますが、大会で確認できているのは、馬や猿に見られる交叉襲歩のみ。

⑤ヒト型襲歩

……呼称は私が勝手につけました。物心ついた頃から四足走行が得意だった人は、私の知る限りではすべてこの走法です。回転数の多さと、足が肩幅より外に出ないことが特徴です。詳しくは前回の記事へ。

 

四足走行は歴史も浅く、競技人口もまだまだ少ないので、みんな走り方が個性的です。

また、走り方一つ変えるだけで一気に記録が伸びることがあります。 

今回のテーマである「最速の走法」は、上記の④⑤を組み合わせたようなものです。それでは、どんなものか見ていきましょう。

 

16秒の壁を破った――最新最速の四足走法

その走法が登場したのは2014年の「第二回四足走行世界大会」でのことでした。

当時の世界記録保持者“いとうけんいち”は、毎年約一秒のペースで記録を更新していたのですが、この年は昨年記録した16秒をなかなか切れずにいました。

大会の半年前の計測では前年のタイムにも届かず、一時的な停滞期だったのではないかと考えています。

絶対王者が破れないのですから、16秒の壁を破るのはもっと先になるかと思われたのですが――

なんと、この大会で出てしまったのです。15秒台が。

過去の記事を読んでいる方はご存じの通り、当時高校生だった玉腰活未選手が出した記録です。 

そしてこの翌年。大会こそ開かれなかったものの、いとうけんいちも自身の前年の記録を一秒以上更新し、15秒台を達成しています。

毎年一秒と言っても、20秒を19秒にするのと16秒を15秒にするのは全く違いますから、これまでにないペースで記録を更新したことになります。なにか革命的なことが起きたことは明らかです。

 

こちらは第二回世界大会決勝の映像 。

優勝した玉腰選手が新型の走法を採用しています。

二位のいとう選手は通常のギャロップ。三位と四位はヒト型襲歩です。


Guinness World Records Day 2014 - Fastest 100m on All Fours

 

 

そしてこちらがその一年後、いとうけんいち選手が世界記録を奪還した時の映像。

玉腰選手が使っていた新型の走法を採用しています。


Fastest 100 m running on all fours - Guinness World Records

 

第二回世界大会のいとう選手の走法と比べて、新型の走法がどう違うか分かりますでしょうか?

 

一つ目は、両足が付いている瞬間がないことです。

スキップと普通の二足走行をやってみれば、その違いが体感できるでしょう。

通常のギャロップ(一つ目の動画のいとう選手が採用)は左右の足で着順がズレていますが、あくまでもカエル跳びの延長で、必ず両足が着いてからジャンプします。

対してこの新型走法の足の動きは、二足走行のように、片足がついたらもう一方の足の着地を待たずにジャンプしています。

体が宙に浮く場面が一回増えるわけですから、これで歩幅が若干大きくなると考えられます。

 

二つ目。

新型を採用した二人の右足に注目してみてください。両足の幅(歩幅とは違うのでご注意ください)が肩幅と同じか、それより狭くなっているのが分かるでしょう。

玉腰選手の場合、足を前に運んだ時は肩の外に出ますが、着地する時には肩より内側に収めています。妙に躍動感があるのは、この所為かもしれません。

新型採用後のいとう選手の場合は、足の出し入れこそしていませんが、左足を右足側に寄せることで足幅を狭くしています。玉腰選手に敗れた際のと比べればよく分かります。

二人とも右足だけ外に出し、左足はずっと肩より内側ですね。

 

バランスが悪いように思われるかもしれませんが、そもそもギャロップは左右非対称の走り方なので、これがあるべき本来の姿でしょう。

 

「二足のような足の動き」と「両足の幅が狭い」

前回の記事でも書いたように、実はこの二点、⑤のヒト型襲歩の特徴でもあるんです。

ということは、この新型走法はギャロップとヒト型を組み合わせたものだということです。

 

まとめ

最後に、ギャロップとヒト型襲歩のメリット・デメリットを整理して、なぜ新型走法が優れているのかを説明します。

ギャロップ

・足を体の外に出すことで、足を大きく使える(歩幅の増大)。

・足元の空間が広いため、腹筋背筋を大きく使える(歩幅の増大)。

・足幅を広げ過ぎると、蹴る力が横に逃げてしまう(歩幅の減少)。

【ヒト型襲歩

・手足の動きが前後だけなので動きに無駄がない(回転数の増大)。

・両足の幅が狭いため、蹴る力がまっすぐ前に伝わる(歩幅の増大)。

・足の動きが二足走行(歩幅の増大)。

・両足が肩より内側だと窮屈になり、足を伸ばしきれない(歩幅の減少)。

 

これが新型走法になると、

【新型走法】

・足を体の外に出すことで、足を大きく使える(歩幅の増大)。

・足元の空間が広いため、腹筋背筋を大きく使える(歩幅の増大)。

・両足の幅が狭いため、蹴る力がまっすぐ前に伝わる(歩幅の増大)。

・足の動きが二足走行(歩幅の増大)。

・足の出し入れをする場合はやや無駄な動きが生じる?(回転数の減少)

 

最後のデメリットの代わりに、二つの走法のいいとこどりをした形になっています。

足幅を狭めに取るため、片足だけ外に出す。二足走行の動きを取り入れること。がミソです。

それにしても、歩幅の恩恵がすごいですね。

一つ目の映像では、玉腰選手は31歩で100mを完走。当時通常のギャロップだったいとう選手は34歩でした(両者とも最初の二足ダッシュは含めず)。体格差があるとはいえ、この差です。

 

ちなみに二つ目の映像のいとう選手は、足の出し入れをせずに足幅を狭くしているので、最後のデメリットは無くなくなっています。また、ブログでは回転重視の走り方に変えたとも書かれていました。

なので、新型の走法を採用した後でも歩幅は変わらず、代わりに回転数が増えています。

歩幅が容易に確保できるようになったから回転数を増やしたと、私は解釈しています。