ナマオの四足研究所

~日本四足競技連盟代表のブログ~

【論文流し読み】四足走行の動作解析

以前、四足走行では左右どちらの足で強く蹴るべきかという記事を書きました。

quadrupedal-namao.hatenablog.jp

元ギネス世界記録保持者の玉腰選手のアドバイスや大学時代に読んだ論文から、「先に着地する方の足」で強く蹴る意識が大事という結論に至りましたが、

今回、その時チラッと触れた論文を深掘りしてみたら、また新たな発見がありました。

箇条書きで紹介します。

論文は馬の駈歩(canter)における床反力を計測したものなので、人間の四足走行にどれだけ当てはまるかは分かりませんが、参考になる部分は多いかと思います。

論文流し読み

【用語】

-反手前肢……先に着地する方の肢

‐手前肢……遅れて着地する方の肢

‐前肢……前足。人間の手に相当。

‐後肢……後ろ足。人間の足に相当。

 

紛らわしいですが、「反」が付くのが「先」に着地する肢と意識して読んでみましょう。読んでいくうちに慣れるはず!笑

難しいという方は、まとめだけ読んでいただければ。

 

※()内はナマオの考察。

①垂直分力

垂直分力の最大値は、後肢より前肢の方が大きい。前肢が重心により近い位置にあるためと考えられる(人間の場合も四足姿勢では重心は前肢寄りになるため、当てはまると思われる)。

肢の支持機能としての役割は、後肢より前肢で、また手前肢よりも反手前肢で大きい。

②前方分力(ブレーキに相当)

手前肢では前方分力の割合が大きく、この傾向は前肢で強く認められた。

③後方分力(アクセルに相当)

反手前肢では後方分力の割合が大きく、この傾向は後肢で強く認められた。

④前後肢と重心の位置関係

前肢は馬体重心から離れて着地し、その後重心に近づく。

後肢は馬体重心近くに着地し、その後重心から徐々に遠ざかる。

⑤ブレーキからアクセルへの移行

反手前肢では、手前肢に比べより重心に近く着地するため、着地期のより早い時期に推進力へ移行する。手前肢では、ストライドを大きくするため重心から離れてより前方に着地し、その結果、制動期(ブレーキ>アクセル)から推進期(アクセル>ブレーキ)への移行が遅れるものと思われる。

(重心との位置関係についての言及から、恐らく前肢のことを言っていると思われる)

⑥前肢の手前肢で一番ブレーキがかかってしまう理由

前肢の手前肢が着地する時期は、後肢の反手前肢がすでに離地し、また他の2本の肢は推進期に相当している。前方への加速度が増加しつつあるのに加えて、その肢の着地角度も比較的後傾していることから、四肢中で最も大きい制動値を示すものと思われる。

(ククク……奴は四肢の中でも最弱……)

まとめ

人間の四足の練習ですぐ役立ちそうなところは、

・推進力は後肢>前肢、先に着地する肢>遅れて着地する肢

・着地する時にその肢の角度が後傾しているとブレーキがかかりやすい。

・遅れて着地する方の肢はストライドを大きくする役割が大きい?

こんなところですかね。

 

どうも私は(馬をイメージしていたからか)手で地面を叩きすぎているようなので、あまり手を使い過ぎないよう意識した方がいいのかもしれません(皮むけも多いし)。知ってはいましたが、四足走行でもスピードを出したいなら足の方が重要です。

また、遅れて着地する方の肢はストライドを意識してみるのもいいかもしれません。

かと言って、より遠くに着地しようとするあまり、着地時の肢の角度が後傾してしまうとブレーキがかかってしまうので、注意したいところです。

さて、練習だ!(多分、レクチャー動画を撮影して以来……孤独で大会もないとなると、なかなかモチベも上がりませんよね笑)

そろそろ練習会くらいは開催できるかもなので、皆さんもぜひ!

参考文献

『床反力による馬の運動解析‐3. 駈歩時の垂直, 前後分力波形と馬体動作との関連性‐

仁木 陽子, 上田 八尋, 益満 宏行
www.jstage.jst.go.jp