ご無沙汰しております!ナマオです!
先日、四足競技についていろいろとお話しする機会があったので、これまでに得た知識や考え方を少し整理しておきたいと思います。
走法の分類について
四足動物は速度や状況によって歩き方、走り方を変えています。
常歩(walk)→速歩(Trot)→襲歩(gallop)
ざっくり分けるとこうなります。
※側対歩(pace)、駈歩(canter)などもありますが割愛します。
また常歩と速歩は二足歩行と同様に左右対称の動きになりますが、襲歩は左右非対称になることも覚えておきましょう。
動物がトップスピードで走る時は襲歩(gallop)を使うわけですが、左右非対称であることからも、体の使い方が前段階の二つと大きく変わることがうかがえるかと思います。
襲歩は全身の屈曲と伸展によって推進力を得ているという点で、左右対称の歩容と違っています。
今日はカエルの日という事で、カエルよりもカエルなカエル型の四足走行をツイート🐸 pic.twitter.com/DF4fXQFarh
— いとうけんいち (@itokenichi_) 2022年6月6日
こんな感じで、カエルのような跳躍の連続で大きな歩幅を出しているのが特徴です。
そして襲歩にも交叉襲歩(Transverse Gallop)、回転襲歩(Rotatory Gallop)の2パターンあります。
明確な違いは、手足の着く順番です。
先ほどは両手両足揃えたカエル跳びの動画を紹介しましたが、実際の襲歩は左右どちらかの《肢》が先に着地します。
交叉襲歩は手が右→左の順だった場合、足も右→左の順で着地します。
回転襲歩はこれが逆になります。
こちらのミネソタ大学のサイトが非常に分かりやすいです。
動くイラスト付きで各歩容について解説されています。
交叉襲歩は馬など大型の草食動物に多く見られ、安定性に優れている。
回転襲歩はチーターなどの肉食動物に多く見られ、速度に優れている。
といった特徴があります。
ちなみに人間の四足競技者の場合はいずれも交叉襲歩です。回転襲歩ができる人はいますが、競技レベルで採用している人はいません。
理由ははっきりとは分かりません。
ただ、上記のミネソタ大学のサイトでは回転襲歩について、
「肉食動物は草食動物に比べて四肢が短い」
「柔軟な胴体によって歩幅を得る」
「脊椎の屈曲と伸展は短い四肢を補い、歩幅を大幅に増大させる」
といった説明がされています。
人間の脊柱はS字カーブを描いていて、猫やチーターのような柔軟性はありません。また足が長く、肩甲骨が背面にあるという点も影響してくるでしょう。
回転襲歩がチーターのような脊柱をうねらせる運動を必要とするならば、人間がこれを使いこなすのは身体構造的にかなり厳しいかもしれません。
なぜトロットが世界記録を塗り替えたのか
さて、ここまで主に襲歩の話をしてきました。
四足動物たちが全力疾走する時は襲歩(ギャロップ)ですから、そりゃあ……ギャロップこそが最強!って思いますよね。
しかしここ数年、立て続けにまさかの事態が起きています。
2023年。アメリカのCollin McClure選手が世界記録を更新。
採用した走り方はなんと――速歩(トロット)!?
そして2025年。米江龍星選手がこの記録を大きく上回り、前人未到の14秒台を記録。
採用したのは――またまたトロット!?
走るより歩くほうが速かったみたいな話で、ちょっと信じられないですよね。
ただ、思い当たる理由はいくつかあります。
まずトロットは左右対称の歩法で、手足の動きが二足走行に近い(というかほぼ同じ)ため、人間の体に適した走法であろうということ。
そしてもう一点、そもそも人間の交叉襲歩がほとんど歩幅を稼げていないということ。
走る速さというのは、回転数と歩幅で決まります。
ギャロップが速いのは跳躍によって歩幅を大きく増やせるからなのですが、人間の交叉襲歩は実を言うと、全身が宙に浮いている瞬間があまりありません。

足が地面から離れる前に手が着地するため、カエル跳びの時の両足→両手の間に全身が宙に浮く瞬間(空間期)がありません。
唯一全身が宙に浮くのは、両手で地面を掻き込んだあとの一瞬だけです(上記写真の3コマ目)。
つまり両手両足が一巡する間に空間期が一回(しかも短い)だけです。
回転襲歩の方は先程紹介したミネソタ大学のサイトを参照してください。
こちらは両足で蹴り出したあとと、両手で掻き込んだあとの二回、空間期があります。
大きな歩幅を稼げているのが分かるかと思います。
しかし残念ながら、人間に回転襲歩は難しいというのは先程話した通りです。
そして、問題のトロットです。
※側対歩(pace)ではなく、斜対歩(trot)のことを話します。

トロットは対角線上の手と足が同期(同時に接地)する歩法で、二足走行と同様の動きになります。
左手右足が接地→右手左足が接地→……を交互に繰り返します。
二足走行では右足→左足→……と交互に接地する間に、全身が宙に浮く瞬間があるわけですが、トロットでは同様の事が起きているのです。
2コマ目と4コマ目の二回、宙に浮いている瞬間があるのが見て分かるかと思います。
一回分の跳躍距離は回転襲歩には劣るでしょうが、空間期が回転襲歩と同じく二回あります。
これまでの四足競技者が採用してきた交叉襲歩は一回しかありません。
つまり、トロットは必ずしも歩幅の面でギャロップに劣っているわけではないのです。
実際に100m走の歩数を比較してみました。
※助走は除外。目視カウントのため誤差の可能性あり。
・2025年9月24日
米江龍星 14秒55 29歩(トロット)
・2025年5月6日放送「テレポート山陰」による計測
米江龍星 16秒33 32歩(交叉襲歩)
・2022年6月30日
Collin McClure 15秒66 30歩(トロット)
・2015年11月6日
いとうけんいち 15秒71 34歩(交叉襲歩)
・2014年11月13日
玉腰活未 15秒86 31歩(交叉襲歩)
より少ない歩数で100mを走破していることから、トロットの方が交叉襲歩より大きな歩幅が出せていると考えられます。
まだ書きたいことはありますが、今日はここまでにしておきます。
↓最後に、見づらそうで没になった図説を供養しておきます。


