ナマオの四足研究所

~日本四足競技連盟代表のブログ~

【四足競技史②】第2回世界大会前日談――知られざる舞台裏エピソード

第1回世界大会が大成功に終わり、その翌年の2014年にも「第2回四足走行100m世界大会」が開催されることになりました。

筆者の私も参加した大会なので、今回はナマオ視点で大会を振り返っていきます。

ちょっと長めです。前回の内容を踏まえて書いていくので、まだその記事を読んでいない方はぜひ読んでみてください。

quadrupedal-namao.hatenablog.jp

 

ナマオが大会参加に至るまで

私が四足走行を始めたきっかけは、ギネス世界チャンピオンの“いとうけんいち”さんではありませんでした。

親が言うには「ハイハイの代わりにやっていた」そうですが、多分冗談でしょう。最初に四足で走ったのがいつなのかは自分でも分かりません。

 でも小学生の頃に通っていた剣道の習い事でのエピソードは、今でもよく憶えています。

 

その習い事では、稽古の合間にレクリエーションとして様々なことをやっていました。

特にリレーはいろんな条件をつけてよくやっていたのですが、その中に「四足で走る」というのがあったんです。

もちろん……私はぶっちぎりでした。

周りは上級生ばかりでしたが関係なしです。毎回私の入ったチームが優勝するので、いつしか「ハイハイ競争」に変わってしまいましたね。

悔し紛れに四足で走ったら失格にされました……笑

 

他には二足で走る友達に勝ったエピソードもありますが、四足走行が自分の特技だと認識したのは、やはりこの習い事がきっかけでした。

しかし当時はまだ四足のギネス世界記録がなかったので、挑戦しようとは夢にも思わず、大人になるにつれて四足で走る機会は減っていったのでした…… 

 

いとうけんいち”さんのギネス世界記録を知ったのは、中学で部活を引退した後だったと思います。調べた限りでは当時の記録はまだ20秒台。「これはイケる!」と思いました。

記録申請の敷居が高かったのでその時は諦めましたが、いつか挑戦したいとは思うようになりました。

そして高校二年生の終わり頃、ネットで四足のことを調べていると、「探偵ナイトスクープ」で“いとうけんいち”さんに勝った人がいることが分かったのです。

前回の記事で紹介した“河原未来也”さんです。

彼の四足エピソードと走り方が自分に似ていて、年齢も河原さんが一つ上で近かったので……なにか燃えるものを感じましたね。

さらに調べると、四足走行の大会が開かれていることも分かりました。

次の大会があると信じて待つこと数カ月、第二回大会の開催が決まり、ようやく世界記録に挑戦する機会に巡り合ったのでした。

 

第2回世界大会の参加者たち

参加するにあたっては、周囲の同意を得るのが大変でした。

当時は高校3年生。大学受験が控えていた上に、あろうことか大会が平日開催なので学校を休まなければなりませんでした。前回大会では河原さんも似たような状況だったみたいですね。

 

このように学生や社会人には参加し辛い面もありましたが、今回も参加者は20人を超えました。

その中で私が注目していた参加者を紹介します。

 

いとうけんいち選手……今大会の主催者。言わずもがな、世界記録を常に保持し続けてきた絶対王者

②河原未来也選手……前大会準優勝。天性の四足走行でいとう選手に勝利したことがある。

③玉腰活未選手……前大会第3位。参加者内ではいとう選手の次に練習量が多い。大きな歩幅が武器。

④T選手……四足経験者。ベストタイムは20秒台で、最初の世界記録を上回る。

⑤H選手……4歳の頃から馬に憧れて四足走行を始めた女子中学生。

 

なんだか第2回大会は天性の四足経験者が多かったですね……予選で当たらないかとヒヤヒヤしてしまいました笑

でもこれまで四足のライバルがいなかった私としては、こういった経験者たちに出会うことは楽しみでもありました。年の近い河原さんと玉腰さんは特に。

残念ながら、河原さんは足を痛めて出場を見送ることになるのですが……

 

 伸び悩みと追い討ち――突然のルール変更

大会に向けて練習を始めたのは夏頃でした。

中学以降はまったくと言っていいほど四足で走っていなかったので、感覚が鈍っていないか心配でしたが……やってみると全然問題ありませんでした。やっぱり子供の頃に身に付いた感覚は、何年経っても錆びつかないものですね。

その後友達に測ってもらった50m走の記録は9秒台。

これなら大会までに100mで20秒を切れると思ったのですが……その後は記録がまったく伸びませんでした(実際に測ったわけではありませんが)。

陸上トラックで走ると手の皮が剥けやすく、練習量を確保できなかったことが原因だと思います。それから、歩幅が大きくとれない走り方だったので、フォームの改善が必要だったのかもしれません。

 

そして、これは書こうか迷ったのですが、やっぱり黙ってはいられないので書いておきます。

 

記録が伸びないまま迎えた大会2週間前。追い討ちをかける出来事がありました。

主催者の“いとうけんいち”さんからメールが届いたのですが……その内容が、参加者の安全のためにフォームチェックをしたいというものでした。参加者(誰かは知りません)が練習中に腰を痛めたそうです。

経験者の私は関係ないだろうと思いつつ、四足走行の動画を送ったのですが、なんとそれが引っかかってしまったのです。

それからルール変更の案内があり、私の物心ついた頃からの走り方は禁止されてしまいました。

 

新しいルールは「足の動きが二足のようになってはいけない」というものでした。

どういうことかと言うと……二足で走る時って、両足が着地する瞬間がないですよね。両足が宙に浮いているか、片足だけ着地しているかの2パターンしかありませんね。

いとうさんが言うには、これは四足動物にはない(ありますけど)足の動きで、上半身をあまり使わない(私、手の皮がよく剥けるのですが……)から腰を痛めるリスクが高いとのことでした。

スキップのように、両足が地面に着いている瞬間のある走法でなければ四足走行とは認めないということです。

 

これが私にとってどれだけ衝撃的だったか分かるでしょうか。

だってこの走法は、河原未来也さんも使っていたものなんです。大会後に分かったことですが、上に挙げた私が注目していた参加者のうち、いとうさん以外全員がこの走法でした。

それを、2週間前になってフォームを変えろというのです。

そんなの、主催者のいとうさんが断然有利になるに決まっているじゃないですか。

 

私はこれに猛抗議したのですが、フォームを変えなければ参加できないので、仕方無く受け入れました。

限られた期間の中、なんとか新ルールに対応した走り方を身に付けたのですが、気をつけなければ失格になるくらいおぼつかないフォームでした。

 

そうして、不安を抱えたまま大会当日を迎えることになるのですが……

衝撃の展開が待ち受けていました。

 

それはまた次回書きます。

 

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