ナマオの四足研究所

~日本四足競技連盟代表のブログ~

【四足競技史③】第2回世界大会当日――世界王者が変わった瞬間

「第2回四足走行100m世界大会」の体験談――後半部分です。

前半の記事を読んでいない方はこちらへどうぞ

quadrupedal-namao.hatenablog.jp

 

「第2回 四足走行100m世界大会」開幕!

2014年11月13日。とうとう大会の日がやって来ました。

 

タイムが伸びなかったり、直前のルール変更でフォームを修正したり……不安も多かったのですが、四足経験者たちに直接会えることはずっと楽しみにしていました(前大会2位の河原さんが出ないのは残念ですが……)。

競技場に入ると、早速“いとうけんいち”さんと対面しました。ルール変更をめぐって一悶着あったので、仲直りと挨拶を兼ねて握手を交わしました。

あと、なぜか反対気味だったお父さんがこっそり来ていました笑

そのおかげで大会時の映像が一部手元に残っています。

 

その後は選手控室で予選のくじ引きがありました。

予選は50mで行い、各1位が決勝に進出する決まりです。優勝候補のいとう選手と玉腰選手は免除でした。

運が良かったのか、あるいは運営側で調整したのか、前回紹介した注目選手がうまい具合に散らばってくれました。

 

予選

ところが、予選ではちょっとした波乱がありました。

 

決勝までは順当に進むだろうと思っていたH選手が、なんとノーマークの選手に僅差で敗れ、予選敗退となってしまったのです。

女子中学生で、体格的なハンデは大きかったとは思いますが、物心ついた頃から四足で走っていた経験者です。スピードも充分に出ていたので、まさかまさかです。

後日、映像を見返して気付いたのですが、その予選を勝ち抜いた選手はレース後半で、例の“二足型”の足の動きになっていました。ルールに則るならば普通に失格です。H選手は結構遠くから来ていたそうなので、こんな終わり方になってしまったのは残念です(これはルールを徹底しなかった運営側の問題だと思います)。

 

私の番はその後にやって来ました。

なにが起こるか分からないので、違反フォームにならないよう注意しつつ、全力で行きました。

結果はダントツの1位……!

だったのですが、四足で走る時は前が見えないので、そのまま報道陣に突っ込んでしまいました笑(今思えばレーン上にカメラマンがいるってなかなか危ないです)

この時に膝を擦りむいて、スパイク(陸上経験者ではありませんが、大会後も四足を続けるつもりだったので買っておいたんです)のピンを一個紛失してしまいました。

 

ともかくこれで、決勝進出が決まりました。フォームについてもいとうさんから直接報せがあり、問題ないとのことでした。 

 

予選後は軽いインタビューを受けたり、他の参加者と話したりして過ごしました。

同年ということもあってか、玉腰選手と話す機会もありました。

4年半も前なので、話した内容はほぼ忘れましたが、ルール変更前に“二足型”の走法で14秒台を出していたという話は覚えています。

異次元過ぎてその時は聞き流してしまったのですが……

(だって、その時の世界記録は前大会の16秒87だったんですよ……?)

 

決勝

決勝に進んだのは、

 

いとう選手

玉腰選手

T選手

ナマオ(筆者)

他3名

 

以上7名でした(書き忘れましたが、白線を跨ぐルールなので7人までしか入らないんです)。

私は第5レーンで走ることになりました。隣はいとう選手です。

スタート練習をした後で、本番レースとなりました。

1本目はいとう選手のフライングでやり直し(公式認定員の合図のタイミングが結構分かり辛かったです笑)。

 

そして正真正銘の本番がスタートしました。

 

いい感じにスタートを切り、序盤は隣にいとう選手を感じることができました。

このままついて行けば、と思ったのですが……徐々にいとう選手が視界から消えていきました(さっきも書きましたが、全力で走ってる時は前が見えないんです笑)。

しかし近くにはまだ人の気配がありました。

直感でT選手だと分かりました。

そして競ったまま終盤へ……

どこかから声援が聞こえました。

私に向けられたものでないことは確かです。T選手に向けたものなのか、あるいは……

声援がきっかけになったのか分かりませんが、ともかくその辺から一気に疲労が押し寄せ、T選手との差が開いていきました。

最後はもう気力だけでゴールしました。

 

周囲がやけに騒がしかったような気がします。

T選手との勝負に夢中で、なにが起こっているのか分かりませんでした。

 

↓ 決勝レースの映像がこちらです。

 


Guinness World Records Day 2014 - Fastest 100m on All Fours

 

なんと、玉腰選手がいとう選手に勝ったのです。

確か、報道陣に紛れていたお父さんの口から聞いて初めて知りました。

それも大差がついていたとのことです。 

その決勝の記録は……

 

1位 玉腰活未    15秒86(世界新/ギネス世界記録認定)

2位 いとうけんいち 16秒85(世界新

3位 T選手      20秒28

4位 ナマオ      20秒63

 

玉腰選手が世界記録を1秒以上上回るタイムで優勝を果たしました。

私自身は目標の3位を達成できず、悔しかったのですが、玉腰選手の活躍で気持ちよく大会を終えることができました。

 

世界記録誕生の瞬間に立ち会えたのももちろんですが、直前のルール変更という逆境に屈せず圧倒してみせた玉腰選手……かっこよ過ぎです笑

 

この大会はもちろん大ニュースになりました。

前回大会に続き地上波全局で放送され、NHKの「きわめびと」をはじめとするいくつかの番組では特集も組んでくれました。

これをきっかけに、四足走行はもっとメジャーになっていくだろうと、当時の私は思っていました。いとうさんのブログにも「連盟を作ろう!」とT選手が書き込んでいました。もちろん私は大賛成でしたね笑

 

でも、実はこの2014年の第二回大会から2019年現在まで、四足走行の大会は一度も開かれていないんです。最後の大会だったんです。

メジャー化するどころか、衰退の一途を辿っているように感じます。

 

次回は、四足競技界は今どうなっているのかを、書ける範囲で書いていこうと思います。

 

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