ナマオの四足研究所

~日本四足競技連盟代表のブログ~

二足走行と四足走行の決定的な違い

まず最初に、歩行と走行の違いについて軽く説明しておきましょう。

走行というのは、「全身が宙に浮く瞬間がある」という点で歩行と異なります。

足が地面に着いたままだと、足の長さで歩幅の限界が決まってしまうので、早く移動するためには足の回転数を上げなければなりません。

走行の場合は、体を宙に浮かせることによって足の長さ以上の歩幅を得られるので、同じ回転数の歩行より速く移動することができます。

 

上の定義で考えると、前の記事の最後で触れたトロットという歩法も、実は走行に分類できる場合があります(ペースが上がると、若干体が宙に浮きます)。

でも、一般的に私たちが想像する四足動物の走行は、トロットではありません。

トロットは二足走行を前足と後足でやっているとも捉えられますが、四足哺乳類の本気の走行はもっと根本的なところが違っています。

 

↓ ここらで、チーターの走行を見てみましょう。


Cheetah Running In Slow Motion - Amazing Footage

 

この走り方はギャロップと呼ばれるものです。

なんだかダイブを繰り返しているように見えますよね。スローでなければ、両手両足が揃っているようにも見える人もいるかもしれません。

 

二足走行やトロットは左右の足が交互に着地するので、「1・2・1・2・1……」という規則的なリズムになります。一方、ギャロップは左右交互というよりは、前後交互になるので「1・2~1・2~1……」という、やや不規則なリズムになります。

ついでに言うと、ギャロップは左右非対称です。稀に例外はありますが。

 

左右交互か前後交互か。一見どうでもよさそうですが、実はこれが重要なのです。

四足姿勢は進行方向に体が長くなります。

これを全部バネとして利用できると考えたらどうでしょう。とんでもない推進力が得られることが想像できるかと思います。

 

チーターの映像を見返すと、後ろ足が着地する時に背骨が弓なりに縮こまり、蹴り出す時にまた伸びているのが分かります。これが、チーターが速く走れる秘密です。

直立二足の姿勢では、背骨のバネの力は全くと言っていいほど使えません。

四足姿勢でも、左右交互の「1・2・1・2……」という走り方では背骨のバネが全く使えません。それがトロットです(別にトロットが役立たずというわけではありません。長距離を移動する時はトロットや歩行の方が効率的だと思います)。

 

直立二足歩行によって、人類はさまざまな運動ができるようになりましたが、速く走るということにおいては、以上の理由から四足動物に敵わないのです。

 

ヒトが四足走行を極めたらどうなるんでしょうね。

四足走行世界記録保持者の“いとうけんいち”は100mを15秒台(最近では14秒台?)で走りますが、彼が四足走行を始めたのは大人になってからです。

世の中には子供の頃から四足走行が得意な人が少なからず存在します。そういった人たちが本気で練習したら、もっともっと速く走れるはずです。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回はギャロップについて、詳しく書いて行こうと思います。

 

↓ 四足イベントの参加者募集中です。気になる方はチェックしてみてください!

quadrupedal-namao.hatenablog.jp

 

四足歩行は基本的に2パターン

 

前足と後ろ足の着く順番で見ると、四足哺乳類の歩行は後方交叉型と前方交叉型の二通りに分けることができます。

 

後方交叉型

f:id:NAMAO:20190723154712j:plain

後方交叉型の着順

ほとんどの四足哺乳類がこの歩法です。

前足後ろ足を人の手足に置き換えると、

左足→左手→右足→右手→左足……

の順番で着地します。

ややこしいと感じる方は、「足→同じ側の手」の順で着地すると捉えると分かりやすいかと思います。

重心が上半身寄りになっている動物が、この歩法を採用する傾向にあるそうです。

 

ちなみに私の四足歩行はこの着順になっています。四足走行のギネス記録保持者“いとうけんいち”さんも、私が確認した映像ではこの着順です。

 

前方交叉型

f:id:NAMAO:20190723154630j:plain

前方交叉型の着順

サルの多くに見られる歩法です。

人の手足に置き換えると、

左足→右手→右足→左手→左足……

の順番で着地します。

「足→反対側の手」の順で着地すると捉えると分かりやすいかと思います。

重心が下半身寄りになっている動物が、この歩法を採用する傾向にあるそうです。

 

ヒトもサルの仲間ですが、人の場合は前方交叉型と後方交叉型の両方が存在するようです。

成長するにつれて下半身の力が強くなり、前方交叉型の人が増えていくのだとか。

 

私は基本的に後方交叉型ですが、肩周りが筋肉痛の時は気付かないうちに前方交叉型になることがあります。

体のバランスや疲労度を知りたい時に、四足歩行は意外と役立つかもしれませんね。

 

歩行のペースが上がっていくとトロットなど他の歩法も出てきますが、今回は割愛させていただきます。

 

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【告知】四足タイムトライアル2019

 

※イベント内容が変更となりました。

↓ こちらの記事からご確認ください。

quadrupedal-namao.hatenablog.jp

 

※以下は古い情報ですので、ご注意ください!

 

このブログを読んでいる方はまだ少ないかと思いますが、早めに告知しておきます。

3ヶ月後の10月27日に、四足走行の計測イベントを行います。

詳細は以下の通りです。

 

1.主催
 四足タイムトライアル実行委員会
2.内容
 四足歩行・四足走行の練習会を行った後、四足走行の記録に挑戦するイベントです。
 四足に自信のある方から、人と違ったことをしてみたいという方まで、どんな方でもご参加いただけます。好記録を出した方には素敵な景品もご用意しております!
3.期日
 令和元年10月27日(日)13時~17時
【練習会】13時30分~15時00分
 初心者と経験者に分かれて練習会を行います。初心者には基本からレクチャーします。
【記録会】15時20分~16時20分
 スタートを合わせて50m走の計測を行います。時間内なら何度でも計測できます。
4.会場
 新豊洲Brilliaランニングスタジアム
5.定員
 先着20名程度。運営に協力して下さる方、経験者の方は定員外で受け付けます。
6.対象
 どなたでもご参加いただけます。先着なのでお早めにお申し込みください。
7.参加費
 1000円
 ※スポーツ保険料を含みます。当日受付にてお支払いください。
8.参加方法・お問い合わせ
 必要事項をご記入の上、下記メールアドレスよりお申し込みください(10月10日締切)。
 お問い合わせも下記メールアドレスにて受け付けます。
 E-mail <quadrupedal-event@yahoo.co.jp>
【必要事項】
 ①氏名
 ②生年月日
 ③連絡先
 ④自己紹介
 ⑤顔写真
9.備考
・当日は手袋と運動靴をご持参ください。陸上競技用スパイクも可能です。
・定員に達している場合、当日参加はできません。見学は可能です。

 

以上

 

四足走行のことがよく分からないという方は、こちらの記事で簡単に紹介しているので、この機会に知っておくとよいでしょう ↓

quadrupedal-namao.hatenablog.jp

 

四足走行の大会は、これまでに2回開催されてきました。

2013年と2014年に、ギネス世界記録保持者の“いとうけんいち”が主催した「四足走行100m世界大会」です。

しかし2014年の第二回大会以降は、いとうさんが単独でギネス記録に挑戦することはあっても、イベントは一度も開催されていません。

ということは、今回のイベントは実に5年ぶりの四足競技系イベントということになります。

 

 

すでに私含めて3人の経験者が参加する見込みです(うち一人は、四足競技界で有名なあの方です……まだ秘密です)。

子供の頃から四足走行が得意だった方……世界記録を狙ってみませんか?

これから始めたいけど、人目が気になってできないという方……みんなでやれば怖くありません!笑

 

まだ見ぬ四足経験者と出会うため。

四足競技を盛り上げるため。

赤字覚悟で企画したイベントので、できるだけ多くの方に参加してもらいたいと思っています。

よろしくお願いします!

 

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四足競技界の現在とこれから

最初の投稿の繰り返しとなりますが、現在の四足走行100mの世界記録は“いとうけんいち”さんが2015年に記録した15秒71となっています。

前年の第2回世界大会では16秒86の記録で2位に終わりましたが、わずか1年で記録を1秒以上更新して、世界王者の座を奪還したことになります。


Fastest 100 m running on all fours - Guinness World Records

 

ただ映像を見てみると、足の動きが第2回大会で自ら禁止した“二足型”になっていて、個人的には納得いかないんですけどね……

四足走行を競技化したのは彼であって、ずっと第一人者だったので、これくらいのズルは目を瞑るしかないんですかね。

 

2017年4月には、“いとうけんいち”さんの運営する四足走行とボルダリングを掛け合わせたジム「all fours GYM」 がオープンしました。

私が行った時は子供の利用者が多く、ボルダリングがメインの印象でした。

四足スペースは10m程度。経験者には物足りないでしょうが、月に一回、子供向けの四足教室があるそうです。

 

第2回世界大会以後の四足ニュースはこんなところです。

記録はまだ伸び続けていて、四足教室もできた……けど、やっぱり大会がないとパッとしませんね。寂しいです。

四足の競技人口は今どれくらいなんでしょうか。

四足走行が速い人の話はまだ時々耳にするので、決して少なくはないとは思います。

もし人が集まるようであれば、小規模でもいいので大会を開催してみたいです。

 

四足競技史シリーズは以上となります。

次回からは、大学で調べたことをもとに四足歩行・走行を解説していきます。

 

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【四足競技史③】第2回世界大会当日――世界王者が変わった瞬間

「第2回四足走行100m世界大会」の体験談――後半部分です。

前半の記事を読んでいない方はこちらへどうぞ

quadrupedal-namao.hatenablog.jp

 

「第2回 四足走行100m世界大会」開幕!

2014年11月13日。とうとう大会の日がやって来ました。

 

タイムが伸びなかったり、直前のルール変更でフォームを修正したり……不安も多かったのですが、四足経験者たちに直接会えることはずっと楽しみにしていました(前大会2位の河原さんが出ないのは残念ですが……)。

競技場に入ると、早速“いとうけんいち”さんと対面しました。ルール変更をめぐって一悶着あったので、仲直りと挨拶を兼ねて握手を交わしました。

あと、なぜか反対気味だったお父さんがこっそり来ていました笑

そのおかげで大会時の映像が一部手元に残っています。

 

その後は選手控室で予選のくじ引きがありました。

予選は50mで行い、各1位が決勝に進出する決まりです。優勝候補のいとう選手と玉腰選手は免除でした。

運が良かったのか、あるいは運営側で調整したのか、前回紹介した注目選手がうまい具合に散らばってくれました。

 

予選

ところが、予選ではちょっとした波乱がありました。

 

決勝までは順当に進むだろうと思っていたH選手が、なんとノーマークの選手に僅差で敗れ、予選敗退となってしまったのです。

女子中学生で、体格的なハンデは大きかったとは思いますが、物心ついた頃から四足で走っていた経験者です。スピードも充分に出ていたので、まさかまさかです。

後日、映像を見返して気付いたのですが、その予選を勝ち抜いた選手はレース後半で、例の“二足型”の足の動きになっていました。ルールに則るならば普通に失格です。H選手は結構遠くから来ていたそうなので、こんな終わり方になってしまったのは残念です(これはルールを徹底しなかった運営側の問題だと思います)。

 

私の番はその後にやって来ました。

なにが起こるか分からないので、違反フォームにならないよう注意しつつ、全力で行きました。

結果はダントツの1位……!

だったのですが、四足で走る時は前が見えないので、そのまま報道陣に突っ込んでしまいました笑(今思えばレーン上にカメラマンがいるってなかなか危ないです)

この時に膝を擦りむいて、スパイク(陸上経験者ではありませんが、大会後も四足を続けるつもりだったので買っておいたんです)のピンを一個紛失してしまいました。

 

ともかくこれで、決勝進出が決まりました。フォームについてもいとうさんから直接報せがあり、問題ないとのことでした。 

 

予選後は軽いインタビューを受けたり、他の参加者と話したりして過ごしました。

同年ということもあってか、玉腰選手と話す機会もありました。

4年半も前なので、話した内容はほぼ忘れましたが、ルール変更前に“二足型”の走法で14秒台を出していたという話は覚えています。

異次元過ぎてその時は聞き流してしまったのですが……

(だって、その時の世界記録は前大会の16秒87だったんですよ……?)

 

決勝

決勝に進んだのは、

 

いとう選手

玉腰選手

T選手

ナマオ(筆者)

他3名

 

以上7名でした(書き忘れましたが、白線を跨ぐルールなので7人までしか入らないんです)。

私は第5レーンで走ることになりました。隣はいとう選手です。

スタート練習をした後で、本番レースとなりました。

1本目はいとう選手のフライングでやり直し(公式認定員の合図のタイミングが結構分かり辛かったです笑)。

 

そして正真正銘の本番がスタートしました。

 

いい感じにスタートを切り、序盤は隣にいとう選手を感じることができました。

このままついて行けば、と思ったのですが……徐々にいとう選手が視界から消えていきました(さっきも書きましたが、全力で走ってる時は前が見えないんです笑)。

しかし近くにはまだ人の気配がありました。

直感でT選手だと分かりました。

そして競ったまま終盤へ……

どこかから声援が聞こえました。

私に向けられたものでないことは確かです。T選手に向けたものなのか、あるいは……

声援がきっかけになったのか分かりませんが、ともかくその辺から一気に疲労が押し寄せ、T選手との差が開いていきました。

最後はもう気力だけでゴールしました。

 

周囲がやけに騒がしかったような気がします。

T選手との勝負に夢中で、なにが起こっているのか分かりませんでした。

 

↓ 決勝レースの映像がこちらです。

 


Guinness World Records Day 2014 - Fastest 100m on All Fours

 

なんと、玉腰選手がいとう選手に勝ったのです。

確か、報道陣に紛れていたお父さんの口から聞いて初めて知りました。

それも大差がついていたとのことです。 

その決勝の記録は……

 

1位 玉腰活未    15秒86(世界新/ギネス世界記録認定)

2位 いとうけんいち 16秒85(世界新

3位 T選手      20秒28

4位 ナマオ      20秒63

 

玉腰選手が世界記録を1秒以上上回るタイムで優勝を果たしました。

私自身は目標の3位を達成できず、悔しかったのですが、玉腰選手の活躍で気持ちよく大会を終えることができました。

 

世界記録誕生の瞬間に立ち会えたのももちろんですが、直前のルール変更という逆境に屈せず圧倒してみせた玉腰選手……かっこよ過ぎです笑

 

この大会はもちろん大ニュースになりました。

前回大会に続き地上波全局で放送され、NHKの「きわめびと」をはじめとするいくつかの番組では特集も組んでくれました。

これをきっかけに、四足走行はもっとメジャーになっていくだろうと、当時の私は思っていました。いとうさんのブログにも「連盟を作ろう!」とT選手が書き込んでいました。もちろん私は大賛成でしたね笑

 

でも、実はこの2014年の第二回大会から2019年現在まで、四足走行の大会は一度も開かれていないんです。最後の大会だったんです。

メジャー化するどころか、衰退の一途を辿っているように感じます。

 

次回は、四足競技界は今どうなっているのかを、書ける範囲で書いていこうと思います。

 

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【四足競技史②】第2回世界大会前日談――知られざる舞台裏エピソード

第1回世界大会が大成功に終わり、その翌年の2014年にも「第2回四足走行100m世界大会」が開催されることになりました。

筆者の私も参加した大会なので、今回はナマオ視点で大会を振り返っていきます。

ちょっと長めです。前回の内容を踏まえて書いていくので、まだその記事を読んでいない方はぜひ読んでみてください。

quadrupedal-namao.hatenablog.jp

 

ナマオが大会参加に至るまで

私が四足走行を始めたきっかけは、ギネス世界チャンピオンの“いとうけんいち”さんではありませんでした。

親が言うには「ハイハイの代わりにやっていた」そうですが、多分冗談でしょう。最初に四足で走ったのがいつなのかは自分でも分かりません。

 でも小学生の頃に通っていた剣道の習い事でのエピソードは、今でもよく憶えています。

 

その習い事では、稽古の合間にレクリエーションとして様々なことをやっていました。

特にリレーはいろんな条件をつけてよくやっていたのですが、その中に「四足で走る」というのがあったんです。

もちろん……私はぶっちぎりでした。

周りは上級生ばかりでしたが関係なしです。毎回私の入ったチームが優勝するので、いつしか「ハイハイ競争」に変わってしまいましたね。

悔し紛れに四足で走ったら失格にされました……笑

 

他には二足で走る友達に勝ったエピソードもありますが、四足走行が自分の特技だと認識したのは、やはりこの習い事がきっかけでした。

しかし当時はまだ四足のギネス世界記録がなかったので、挑戦しようとは夢にも思わず、大人になるにつれて四足で走る機会は減っていったのでした…… 

 

いとうけんいち”さんのギネス世界記録を知ったのは、中学で部活を引退した後だったと思います。調べた限りでは当時の記録はまだ20秒台。「これはイケる!」と思いました。

記録申請の敷居が高かったのでその時は諦めましたが、いつか挑戦したいとは思うようになりました。

そして高校二年生の終わり頃、ネットで四足のことを調べていると、「探偵ナイトスクープ」で“いとうけんいち”さんに勝った人がいることが分かったのです。

前回の記事で紹介した“河原未来也”さんです。

彼の四足エピソードと走り方が自分に似ていて、年齢も河原さんが一つ上で近かったので……なにか燃えるものを感じましたね。

さらに調べると、四足走行の大会が開かれていることも分かりました。

次の大会があると信じて待つこと数カ月、第二回大会の開催が決まり、ようやく世界記録に挑戦する機会に巡り合ったのでした。

 

第2回世界大会の参加者たち

参加するにあたっては、周囲の同意を得るのが大変でした。

当時は高校3年生。大学受験が控えていた上に、あろうことか大会が平日開催なので学校を休まなければなりませんでした。前回大会では河原さんも似たような状況だったみたいですね。

 

このように学生や社会人には参加し辛い面もありましたが、今回も参加者は20人を超えました。

その中で私が注目していた参加者を紹介します。

 

いとうけんいち選手……今大会の主催者。言わずもがな、世界記録を常に保持し続けてきた絶対王者

②河原未来也選手……前大会準優勝。天性の四足走行でいとう選手に勝利したことがある。

③玉腰活未選手……前大会第3位。参加者内ではいとう選手の次に練習量が多い。大きな歩幅が武器。

④T選手……四足経験者。ベストタイムは20秒台で、最初の世界記録を上回る。

⑤H選手……4歳の頃から馬に憧れて四足走行を始めた女子中学生。

 

なんだか第2回大会は天性の四足経験者が多かったですね……予選で当たらないかとヒヤヒヤしてしまいました笑

でもこれまで四足のライバルがいなかった私としては、こういった経験者たちに出会うことは楽しみでもありました。年の近い河原さんと玉腰さんは特に。

残念ながら、河原さんは足を痛めて出場を見送ることになるのですが……

 

 伸び悩みと追い討ち――突然のルール変更

大会に向けて練習を始めたのは夏頃でした。

中学以降はまったくと言っていいほど四足で走っていなかったので、感覚が鈍っていないか心配でしたが……やってみると全然問題ありませんでした。やっぱり子供の頃に身に付いた感覚は、何年経っても錆びつかないものですね。

その後友達に測ってもらった50m走の記録は9秒台。

これなら大会までに100mで20秒を切れると思ったのですが……その後は記録がまったく伸びませんでした(実際に測ったわけではありませんが)。

陸上トラックで走ると手の皮が剥けやすく、練習量を確保できなかったことが原因だと思います。それから、歩幅が大きくとれない走り方だったので、フォームの改善が必要だったのかもしれません。

 

そして、これは書こうか迷ったのですが、やっぱり黙ってはいられないので書いておきます。

 

記録が伸びないまま迎えた大会2週間前。追い討ちをかける出来事がありました。

主催者の“いとうけんいち”さんからメールが届いたのですが……その内容が、参加者の安全のためにフォームチェックをしたいというものでした。参加者(誰かは知りません)が練習中に腰を痛めたそうです。

経験者の私は関係ないだろうと思いつつ、四足走行の動画を送ったのですが、なんとそれが引っかかってしまったのです。

それからルール変更の案内があり、私の物心ついた頃からの走り方は禁止されてしまいました。

 

新しいルールは「足の動きが二足のようになってはいけない」というものでした。

どういうことかと言うと……二足で走る時って、両足が着地する瞬間がないですよね。両足が宙に浮いているか、片足だけ着地しているかの2パターンしかありませんね。

いとうさんが言うには、これは四足動物にはない(ありますけど)足の動きで、上半身をあまり使わない(私、手の皮がよく剥けるのですが……)から腰を痛めるリスクが高いとのことでした。

スキップのように、両足が地面に着いている瞬間のある走法でなければ四足走行とは認めないということです。

 

これが私にとってどれだけ衝撃的だったか分かるでしょうか。

だってこの走法は、河原未来也さんも使っていたものなんです。大会後に分かったことですが、上に挙げた私が注目していた参加者のうち、いとうさん以外全員がこの走法でした。

それを、2週間前になってフォームを変えろというのです。

そんなの、主催者のいとうさんが断然有利になるに決まっているじゃないですか。

 

私はこれに猛抗議したのですが、フォームを変えなければ参加できないので、仕方無く受け入れました。

限られた期間の中、なんとか新ルールに対応した走り方を身に付けたのですが、気をつけなければ失格になるくらいおぼつかないフォームでした。

 

そうして、不安を抱えたまま大会当日を迎えることになるのですが……

衝撃の展開が待ち受けていました。

 

それはまた次回書きます。

 

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【四足競技史①】ギネス世界記録の誕生~第1回世界大会

最初のギネス世界記録

四足走行が競技として認知されるようになったのは、2008年に“いとうけんいち”さんがギネス世界記録を樹立したことがきっかけです。

2014年の6月に放送された「きわめびと」では、彼が四足走行を始めるに至った経緯が紹介されていました。

自分の可能性を求めてニューヨークへ渡ったいとうさんは、動物園で見た猿の走り方に憧れ、四足走行の練習を始めました。

毎日欠かさず6時間の練習をこなすこと5年、遂にいとうさんの四足走行はギネス世界記録に認定されたのでした。

 

挑戦者“河原未来也”

それから毎年1秒ほどのペースで記録を更新していった“いとうけんいち”さんですが、思わぬライバルが出現します。

 

2012年1月27日。

探偵ナイトスクープ」という番組で、彼に挑戦状を叩きつけた人物がいました。

その人物の名は――河原未来也。

当時15歳で、物心ついた時から四足で走るのが得意だったそうな。

いとうさんほどの練習量ではないでしょうが、単純な経験年数ならば河原さんの方が長いということになります。

これまででも、いとうさんは世界各地から挑戦を受けることはありましたが、ことごとくはね除けていたと言います。

 今回も100m走では僅差で勝利しますが、続く50m走ではなんと……河原さんが勝ってしまったのです。

 

「第1回 四足走行100m世界大会」

それからおよそ二年後の2013年11月14日。

記念すべき、世界で最初の四足走行世界大会が開催されました。

主催者は“いとうけんいち”さん。

開催に至った経緯は分かりませんが、河原さんの影響を受けたことは間違いないでしょう。この大会には河原さんも参加していました。

 

最終的に集まった参加者は20人。地上波全局のみならず、世界各地のメディアがこの大会の様子を報道するという盛況ぶりでした。

 

その大会の様子がこちら ↓


Guinness World Records Day 2013 - Fastest 100m on All Fours

 

大会前の世界記録は、いとうけんいち選手が2013年8月に到達した17秒23。

そしてこの大会の記録は……

 

1位 いとうけんいち 16秒87(世界新/ギネス世界記録認定)

2位 河原未来也   17秒05(世界新

3位 玉腰活未    18秒04

以下略

 

河原選手が世界記録を上回る走りを見せましたが、いとうけんいち選手が後半で一気に追い上げ、世界王者の座を守り抜きました。

 

さて、いとうさんと河原さんの勝負も熱かったのですが、第3位の玉腰選手の走りも飛び抜けていましたね。

次回紹介する第2回世界大会では、玉腰選手が主役となります。

私も参加した大会なので、テレビでは報道されなかった舞台裏エピソードもあわせて紹介したいと思います。

 

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